湘北SDGs

【授業紹介】世界に誇る、ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」地域文化とSDGs

 2024年12月5日ユネスコ無形文化遺産に「伝統的酒造り」が登録されました。これにあわせて「食の情報発信」(生活プロデュース学科 1年生 選択科目、吉川教授担当)のゲスト講師として、「伝統的な酒造り」の地域文化・地理的表示(GI)にまつわるSDGsに関する授業を担当しました。日本の伝統的な酒造りは、各地域の恵まれた気候風土で育まれたこうじ菌を使う独特のものであり、日本が誇る文化なのです。[註1]

 今回は、高等教育機関講師歴20年の活動と並行して、2013年から「焼酎スタイリスト®」として各地の酒造組合・蔵元・酒造業界関係者、観光協会や商工会議所、地方自治体と行ってきた酒造業界の活動を事例にあげ、日本の伝統文化・食文化の講義を展開しました。酒造業界も他業界同様に、家族を養いながらより良い「モノづくり」を目指して働く人たちがいます。伝統の技術や精神を受け継ぎ未来へつなげようとする人たちの文化的な活動があって成り立っているのです。

 なお、履修生は未成年であるため、「飲酒は二十歳になってから」という基本ルールを守ることの大切さも伝えて展開しています。

《「伝統的酒造り」と地理的表示(GI)》

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 地理的表示(GI)に関しては鹿児島県の「GI薩摩」を例に挙げました。地理的表示とは、地域の共有財産である「産地名」の適切な使用を促進する制度です。世界的に有名なものが「シャンパーニュ」です。フランスのシャンパーニュ地方で生産された発泡性ぶどう酒で、一定の基準を満たしたものをさします。[註2] 「GI薩摩」は薩摩焼酎とも呼ばれます。桜島の火山灰によってできたシラス台地など地域特性を活かして受け継がれてきた製法の芋焼酎をさします。原料にも鹿児島県産使用(※奄美市および大島郡を除く)など規定があり、商品ラベルなどにある「GI薩摩」ロゴが目印です。

 学生からは「アルコールは身体によくないというイメージがあったので、GI薩摩に該当する芋焼酎がさつまいも・麹・水の3つしか使っていないことに驚いた」「お酒が自然界のものが発酵してできているのだと初めて知った」と食文化を学ぶ学生ならではの新たな知識になったようです。

《「伝統的酒造り」の魅力と「本格焼酎」のSDGs》  

 ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」に該当するお酒のなかで、伝統的な製法で造られた焼酎のことを「本格焼酎」とよびます。その製造蔵である鹿児島県の濵田酒造株式会社、大石酒造株式会社を例に挙げて、酒造業界の魅力・私の専門であるブランディングも含めた国内外のSDGsについて講義しました。

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学生の感想を一部紹介します。

■濵田酒造の芋焼酎「DAIYAME」と麦焼酎「CHILL GREEN」の取り組みから、伝統と革新を融合させたブランド戦略を感じました。モダンなラベルデザインやネーミングは、若い世代や海外市場にも届きそうだと思います。環境配慮や持続可能性への取り組みも伝わり、SDGsへの貢献意識の高さを感じました。日本文化を進化させながら世界に発信する姿勢が企業イメージをさらに向上させていっているように思いました。(H)

■日本はまだSDGsの意識が低い国なので、ヨーロッパなどSDGsが発展した国を見習うべき部分があると感じました。特産品の知名度を上げたいと思いのある鹿児島県は地元愛が強い地域だと感じました。(Y)

■大石酒造のSDGsに関連した活動のなかで、芋焼酎でもオーガニックを使用するというのを今回知りました。オーガニック製品ももっと広げていきたいという蔵元の思いが伝わってきました。芋焼酎「Hi-Five」や梅酒「MOJOKA」(もじょか)の話を通して、有機でも有機ではなくても農家さんへの感謝を忘れずに製造しているのがとても印象的でした。(S)

■お酒のSDGs活動は瓶のリサイクルのイメージが強かったのですが、製造時に出る芋焼酎粕を家畜の飼料や堆肥の原料にするなどいろいろと行っているのだなと思いました。(N)

《酒文化へのイメージが一転、SDGsの知見が広がる時間に》  

 「伝統的酒造り」に該当する清酒・本格焼酎・泡盛の製造中心地とゆかりのない地域で育ってきた学生ならではの等身大の感想が寄せられました。私自身も大学講師兼「焼酎スタイリスト®」として、地域文化教育・食文化教育として力を注いでいこうと思わせてもらえるコメントが届きました。

■今まで「お酒は身体に悪影響なのに、なぜ生産する必要があるのか」と思っていました。しかし今回の講義を受けて、お酒には様々な歴史的文化があったり、昔から地域で親しまれてきたものなのだと知りました。自分が二十歳になったら今回の講義の銘柄を飲んでみたいと思いました。(N)

■お酒はいけないものというイメージがついていましたが、お酒を造ることで家族を養っている人もいるので、あまりお酒にマイナスなイメージだけを持たずに飲酒可能な年齢になったらお酒を楽しみたいと思いました。昔はさつまいもを保存するためにお酒が造られていることも初めて知りました。酒造りには食べ物を加工保存する目的もあったと知り、驚きました。(H)

■いつも家族が芋焼酎を飲んでいて、今までは匂いが強くておいしいのか疑っていました。講義でお酒の造り方などを聞いて、大人は美味しく感じるのだなと思いました。あと半年もすれば私も二十歳になるので、その時に気になったお酒を飲んでみたいと思います。(K)

■多くの人に飲んでもらいたい思いから手が届きやすい価格帯にしているのは、お酒を造る人にとっては大変なんだろうなと感じました。多くの工夫が施されて私たちに届いているだろうから、二十歳になったらちゃんと味わって飲んでみたいと思いました。(A)

■お酒で失敗している大人をニュースで見ていましたが、今回の講義でお酒はコミュニケーションを取るための手段や仲を深める目的もあるという印象になりました。どのお酒にもひとつひとつ歴史があることに感慨深くなりました。(K)

■お酒を造るには、水が美味しい良質な場所が前提だと知りました。(酒文化に関しては)全くの無知だったけれど「日本の文化」として知っておくのは大切だと思います。(N)

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[註1] 国税庁 ※外部のサイトにリンクします

[註2]焼酎&泡盛スタイル「福岡 「GI本格焼酎・泡盛オンラインシンポジウム」―焼酎スタイリストのイベントレポート」  ※外部のサイトにリンクします

協力:濵田酒造株式会社、大石酒造株式会社、鹿児島県酒造組合、ウェブマガジン「焼酎&泡盛スタイル」、色彩総合プロデュース「スタイル プロモーション」

(生活プロデュース学科 非常勤講師 小島由記子、焼酎スタイリスト®yukiko) 

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