
社会福祉援助技術とは貧困、病気、障がいなどによる生活困難者を援助、支援するソーシャルワーク技術のこと。
授業ではこうした社会福祉援助技術について関心を持つとともに、彼らと係わる基本的な知識や技術を学ぶ。授業では相談指導援助について、カウンセリングの基本を演習で勉強する。
一般的に相談指導援助におけるカウンセリングでは「インテーク(受容)→アセスメント(評価)→プログラム(支援計画策定)→インタベンション(働きかけ)→評価」というプロセスを繰り返しながら問題を解決に導いていく。この日の授業では、相手の気持ちを受容する「インテーク」の段階である。

田中教授は出席を取ると、新聞や雑誌などで気になったニュースや興味深い話題などをいくつか披露する。これは学生に対し、日頃から社会に目を向けて広い視野を持ってほしいとの考えから行っているものだ。
これらの話題に対して、学生たちは真剣に耳を傾け、また、さまざまな意見が飛び交う。実はここが教授の狙いでもある。
続く演習では、重い病気で母親が働けなくなった母子家庭を例に、福祉事務所の担当者の対応について取り上げた。学生が事例を読み上げると、周囲からどよめきが起こる。
実はこの事例、田中教授が実際に相談を受けた事実に基づいて作成されたものだ。内容についてどう思ったか、どこに違和感を感じたか、ではどうすべきか、みんなで意見を交換しながら解決に導いていく。

授業を受けている学生は保育者を目指す人が多い。実際の現場では社会福祉援助技術を使用することがよくある、と田中教授は言う。
「問題の本質が、実は子どもを預けにくる親にある場合も多く、保育者は親と子の関係をしっかり見つめ、万一、幼児虐待など問題が露呈した場合は速やかに解決をはからなければなりません。専門外の問題を扱う事になった場合は、当事者と専門機関の間をつなぐ役目を果たすのも重要な役目です」(田中教授)
学生にはまだ身近感じられない内容かもしれないが、保育者になった卒業生が相談に来たり、「授業の意味がようやく分かりました」と訪ねてきたりすることもあるという。
「保育者というと子供の笑顔に囲まれた明るいイメージを思い浮かべがちですが、実はこのような部分を解決して、初めて子どもたちからの本当の笑顔がもらえるのです」


大学の法学部を卒業した後に24年間に渡って知的障害児者施設で勤務した経験があります。この年月は私にとって優しい時間の流れだったと思います。しかし、有意義な時間の流れは、年を重ねる私に一つのテーマを提示することになります。そのテーマとは知的障害を持つ人たちと職員との関係をなぜ「治療教育」や「訓練」「しつけ」などの権威的な専門用語でくくってしまうのかという疑問でした。つまり、知的障害を持つ人たちと職員とのかかわりのなかには健全な人間関係論が育っていなかったのです。私はこのテーマに夢中になりました。そのなかで大学院の門を叩くと同時に研究生活を目指すことになります。このテーマは教員になった今でも重要な研究課題となっています。また、私が現在においても相談援助という学問に拘っている理由です。